東京からの帰り、品川の原美術館でヘンリー・ダーガーを観て来た。閑静な住宅街にあるこの私設美術館が私は以前から好きだったが、こんなに人がいっぱいだったのは初めてだ。若いカップルばっかり。
ぱっと見、女の子とお花ときれいな色彩で埋め尽くされた作品は『かわいい』けれど、裸体の少女にはペニスがあるし、首を絞められてたり、内蔵が飛び出していたり。
皿洗いや病院の雑役をしながら、誰にも会わず誰にも見せず、ただ自分のためだけに絵を描いていたこの人は、死後30年には、ゴミを拾い集めて作った作品が1点2000万円にもなっていることや、日本のおたく文化の文脈のなかでブレイクしていることなど、予想だに出来なかっただろうな、などと考えながら、あまりに切ない彼の人生を思い、あまりにも純粋で初々しい作品群に、ただ感嘆するばかりでした。
翌日は、札幌からの友人を案内して天竜の秋野不矩美術館へ。平山郁夫の素描展だった。
入館者数と言う数値目標達成のための企画展であることが丸見えで、作品はと言えば、こんな絵はがきみたいな絵をあなたはほんとに描きたかったの?と、昨日観たダーガーの生への切実さからすれば天と地の慇懃(いんぎん)さ。それでも、美術館の建物だけはいつ観ても素晴らしい。
札幌の友人からきっつーい作品評をもらい、それをじっと噛み締める。ドイツ展がまた変わっていく。