高校美術1の教科書に遠藤彰子の作品と彼女の高校生に向けての言葉がのっている。要約するとこんな感じです。
『小さいときから絵が好きで得意だった。だから芸術高校を受けたのに友達はみんな受かって私だけ不合格だった。意に染まない女子校へ行ったけれど退学してやっぱり芸術高校へ行った。週に16時間も美術の授業があって夢のようだった。彫刻の課題が出ると友達はひとつ提出していたけれど私はいつもみっつ作った。
絵を描いている時間が幸せだ。(教科書に載っている)この作品は、3年がかりで3000時間は描いた。』
若いひとたちに遠藤彰子さんを紹介しなければならない立場なのに私のこころは『3000時間』にやられてしまった。
先月Steps Galleryで個展をしていた永野のりこさんは、高校の教員をやめて今はフルタイムアーティストだ。
彼女は言う。
『やめないで定年までお勤めして退職金もらったとすると、全部であと1億円くらいなのよね。その一億捨てたと思うと、非常勤講師とかみみっちいバイトなんてばかばかしくてやってられないわよ。だから私一日中ずーっと絵を描いてるの。広ーい草原をひとりぼっちでずっと走ってる感じがする』
私は今日一日じゅう絵を描いていたのですが、1ミリも進まなかった。描いても描いても全然で、それでなんだか遠藤さんと永野さんの芸術の時間について思ったりしたという訳です。時間があれば自動的に作品が生まれるなんてことは決してないのだろうと。