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乾 久子の日常
by hisakoinui
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アートバーゼル香港2015に行きました。 世界中のコレクターや富豪がプライベートジェットで乗り付けるというアートバーゼルのアジア版。世界中から名だたるギャラリーとギャラリストと一押し作品が集結する三日だけのアートフェア。 今のところ買う側にも売ってもらう側にもなれないのですが、覗くぐらいはしてみたかったので行ってみたという訳です。 初日だったからでしょう、大勢の人でいっぱいでした。
年商数兆円といううわさのガゴシアンギャラリー香港の若きギャラリストさんはハーバード大卒でアメリカの大手コンサルからの引き抜きで香港に来ているとどこかで読んだけれど、その彼とおぼしき人をみかけました。あたり前ですが一般の客なんて相手にしていません。おそらく前日のVIPだけの特別公開で全ての商談を終えているのでしょう。 日本の有名な画廊はもの派や具体といった1960年70年代の作品を扱っているところが目立ちました。最近欧米で日本のその頃の現代美術が評価されているからでしょう。つまり、ターゲットは欧米のコレクターや美術館です。プレもの派として再評価された静岡の『幻触』の作家I氏のトリックアート作品も出ていました。値段を聞くと80000ドル(米ドル)ということでした。大阪の国立国際美術館でのもの派展、昨年の静岡県立美術館での幻触展と評価を定めて行って、今ここにあってこの値段、というストーリーが見えてわかりやすかったです。ただ、残念に思ったのは、高い評価を下し、お金を出すのは日本人ではなく欧米の人たちだとしたら、作品がみんな海外に出て行ってしまうことです。明治維新の時に失った日本文化の二の舞ではと。。。 最近ブレイクした日本の若い作家たちの作品も見ました。扱っているのは、上海や台北のギャラリーが多く、ここにももうひとつのわかりやすいストーリーがありました。 50才ぐらいの白人女性が塩田千春さんの平面作品を買っていました。10号ぐらいのキャンバス。25000ドルと言っているのが聞こえました。塩田さんの初期の糸の集積のインスタレーションを平面に定着させたような作品でした。あのインスタレーションが評価され、でも、インスタレーションでは所有してもらえないから、飾れるような作品を作るようにと言われて制作したのかなと見た瞬間は思いましたが、さすがプロ、本当に緻密で美しい佳作でした。 作家本人が平面作品にしたかったのかはわかりませんが、売ることに特化した美術の見せ方の文法はあるようです。 さてそれから私は、お金は度外視で純粋な鑑賞者として会場を回りました。リオデジャネイロのギャラリーが扱っていたドローイング作品、それからダブリンのギャラリーが出していたペインティングに強く惹かれました。リオにもダブリンにも行ったことなどないのにと思うとちょっとうきうきしました。 純粋な鑑賞者といいながら、やはり値段が気になり思い切って尋ねてみました。 リオの方(ドローイング)は60000ドル(米ドル)、ダブリンの方(タブロー)は10000ドルでした。 紙に描かれたドローイングに700万円以上出す人がいるということなんだなと思いました。 そして私は改めて思いました。仮に私に60000ドルの小切手を即刻切れる経済力があったとしても、私はその作品を買わないだろうと。いくらその作品が好きでも、私には700万円の価値があるとまでは思えないのです。それはもしかしたら私に見る目がないとか、美術市場に疎いとかそういうことなのかもしれませんが、作品の値段を決める力学と、美術の価値は別のものではないかなと思います。 ギャラリー巡りの世界旅行楽しく、いろいろ学びましたが、結局素朴な立ち位置に戻って帰って来ました。 よい仕事をしていきたいものです。
by hisakoinui
| 2015-04-02 20:31
| みてきた展覧会
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