昨日からずっと、ストーンズのPaint it Blackが、私の頭の中とこころの中でヘヴィローテーションしています。
敬愛するアーティスト丹羽勝次さんの個展が静岡市の金座ボタニカで開かれていて、昨日は、コントラバスとアルトサックスのフリーインプロビジョンがあり、そこでPaint it Blackの演奏を聴いたのでした。インプロといいつつ曲目が決まっているのは矛盾かもしれないけれど、黒く塗れ!ということばどおり、丹羽さんの作品が、黒い板、黒いロープのインスタレーションだったのです。
コントラバス奏者は浅野忠信に似た風貌、黒髪の長髪でかっこよく、サックスの人は理系の匂いのする素朴な感じの男性でこちらは繊細な演奏でした。
黒い板を使うインスタレーションといえば斉藤義重が有名ですが、丹羽さんの作品は似て非なるものでした。
斉藤作品の黒はマットで美しく板の存在そのものが美であり、黒い板という『物質』に語らせている物語りが、なにかとても高尚で洗練された感じがします。もっといえば、現代美術というコンセプトを強く意識している作品、つまり、かなりヨーロッパ的な感じがします。
丹羽作品はそうではなくて、作品に温度があって作者の息づかいが聞こえるような作品です。板の表面、テクスチャーからもそれを感じました。ある種の土着性も含みながら、もうひとつのカテゴリーをおもわせる美を体現しつつあり、しかし完成していない感じ。しかも作品の背景には3.11以後の日本社会への強い思いがあるのです。
マービン・ゲイのwhat's going onが作品のテーマでもあるので、昨日のライブでは純粋なインプロを挟んでその演奏もあり、それもとてもよかったです。
そんな余韻に浸っていた今日の夕方、アトリエでドローイングをしていたとき、思いがけず丹羽さんご本人からお電話をいただきました。
83才の老アーティストの語り口はいつもあたたかく知的で穏やかです。昨日ほとんど話せなかったからということでしたが、お電話とても嬉しくて、ストーンズのことをおもわず聞いてしまいました。
ローリング・ストーンズは昔からお好きだったのですか?
すると驚くべきお返事が返って来ました。
実は僕はずっとジャズを聴いていて、まあ、コルトレーンとかお決まりのものだけど、ストーンズはね、というか、ロックはね、2011年の3.11の後に出会ったんだ、しかし、そのあとはもうはまってしまって、、、、
80才になろうという時にロックに出会った、、そう丹羽さんはおっしゃったのです。
その自由さとしなやかさに打たれ、paint it Blackをあらためて聴き、何度も聴き、ああ、本当に名曲だと思った今日でした。