7月28日
東京
文化学園服飾博物館 『世界の刺繍』
鴨江アートセンターの青木さんが、こんな展覧会やってるよと伝えてくれたのは、FBで時々ステッチドローイングなる小品をアップロードしていたからでした。私の日々の発信をみていてくれる人がいる。
仲良しの昌子さんと連れ立って上京。
高校家庭科教師の彼女は最近日本刺繍を始めたところで、お互いにとってタイムリーで関心の大きい展覧会です。
とはいえ、三日前に民博で様々な民俗の刺繍を見てしまった私。世界中のおんなたちの手の技に深く感動し、しかも国立博物館の権威も加わり、この、小さな私設館の企画展にそれほど大きな期待はしていなかったのでした。民博でみたようなものを、また見ることになるのかなと。
でも、それは、全くもって間違っていました。
作品数もクオリティも相当でした。全部見るのに二時間かかりました。
刺繍の世界の広さと奥行き、人の手のなせる極限、そこに流れたであろう膨大な時間、そういったものを見せつけられました。
ごくごく薄いジョーゼットの生地に、こんなにも緻密で美しい刺繍が施されている!!と息をのみました。
作業着として使われていたであろう衣服に、美しくどこまでも細やかで規則的なステッチ。そしてそのステッチの根拠は、生地が貴重であったから、そのひとつの衣類を長持ちさせるためであったという。
その事実に感動し、用というものが上にありながらこれほどまでに美を究められるその精神と作り手の手の技にただただ圧倒されました。
機織りで表現するよりも簡易であったから刺繍となったという説明が付された作品の、なんと細かで繊細なひとはり一針であったことか。つづれ織りの美しさ!
つづれ織りの作品を前にして突然、奈良・當麻寺の中将姫の蓮糸曼荼羅に思いがゆきました。
あの曼荼羅図を、テキスタイルで、植物の繊維で表現しようとした中将姫。
手の技だけが生み出す精神世界がきっとあるのだと思いました。
それにしても、大阪と同じく、ここにもまた名を残さないひとたちの手の営みが生み出したもののすごさに圧倒されました。
私のステッチドローイングなど、いかにも軽薄でちいさなものだと思いもしましたが、一針ずつの手の身ぶりという点ではおなじこと。針と糸で表現される刺繍の世界、ますます面白く感じました。