浜松市中区佐鳴台6丁目のうなぎ又一さんでの展示、終了いたしました。
お運び下さったみなさま、気にかけてくださった方々、ありがとうございました。
展示の期間中に私がお店にいた時間はほとんどなく、いたとしてもお客としてうな丼を食べていたので見てくださった方との直接の交流はありませんでしたが、又一のご夫妻がいろいろ伝えてくださいました。
うなぎは、注文してから出てくるまで時間がある程度かかるので、待っているあいだゆっくり見てもらえたようです。
作品に関心を持って、過去のDMや名刺を持って帰られた方。
くじ引きドローイングの名作集を手に取って『これは楽しいね』と言って帰った方。
三組町にアトリエがあったころの知り合いの方。今はこんな作風なんですねというリアクションだったそうです。どなただったのでしょう。
など、私がいないところで私の作品が見てもらえるシーン。
ありがたく嬉しいことです。
ところでまた私は考えました。
ホワイトキューブと、店舗の壁とのあいだにあるもの。
それは、近い視点でいうなら、誰に見せ誰に評価されたいのかということになって行きます。
両方、なのだと思います。
美術の畑の人たちと、普段美術とは縁遠いひとたち。
努力してでもその関係をフラットなものとして位置づけておくべきだろうと私は思います。
それに、いちがいにホワイトキューブと言ってもそれがレンタル画廊であったなら、鰻屋さんの壁の方があるいは『仕事』というかたちに近いのかもしれないということも思いました。
少なくとも今回は又一さんからの依頼であり、つまり企画展だったのです。
教会の食堂に描かれたフレスコ画は教会の依頼で制作されました。
芸術は芸術のためにあるのかといった古くて新しい問題。
そしてまた、かりに企画の商業画廊でのホワイトキューブと比較してみても、差はないのかもしれません。
商業画廊の目的が作品を売ることにあるならば、作品の行く先を想像してみれば同じことかもしれません。
純粋さで言ったら『投機』の要素が一ミリもない鰻屋さんかもしれません。
ここでも両方が必要かと思います。
などなど、自分に対して必死の抗弁をする自分の小ささを思いますが、この思考も私には必要なことでした。必要なプロセスでした。
そしてこのことは又一さんの展示二回目であったからこその収穫でした。
もしも3回目という機会に恵まれることがあったなら、私はもっとクールに、もっとプロフェッショナルに自分の自信作を静かに展示したいと今は思っています。
最後にとても嬉しく、とても大きなことを記しておきます。
又一さんが作品のうちの一点を購入してくださいました。ステッチドローイングの新作。
うなぎの又一での乾久子展は名実共に完結したと思いました。
本当に感謝です。
その作品はしばらく店内に飾っていただけるようです。
暑さがひいても鰻はおいしいです。
みなさま引き続き又一にお運び下さい。
よろしくお願いします。