2月×日
朝目覚めると吹雪のような悪天候。
歩いてどこかに出かけるのはとても無理そうでブルックリンのギャラリーめぐりを諦めてメトロポリタンミュージアムに行くことにする。美術館なら入ってしまえばずっとポカポカのはず。
ホテルの前でタクシーを拾う。
NYのタクシー、イエローキャブは、メトロポリタンミュージアムと行き先を告げてもダメで何アヴェニューの何番ストリートと言わなければならない。その行き先がどんなに有名なところでも。
雪は相当降っていて道にも積もっているし除雪車が雪かきをして道の脇に積み上げてもいる。
しかし、走っている車はみなノーマルタイヤの模様。もちろん乗ったタクシーも。
始めは普通に走ってくれたけれど次第に雲行きが怪しくなる。
ゆるゆるっとスリップして隣の車線の車にぶつかりそうになりそれを避けようとハンドルを切れば、今度は反対側の大型トラックが迫っている。路肩側の車線に移動するも、クルマはどんどん後ろに下がっている。ずっとスリップしている。アクセルを踏んでもズルズル下がり、やがて路肩の雪の山に斜めにはまった。
クソッと黒人の運ちゃんは言いながらアクセルをめいっぱい踏み込んでいるが全く動かない。
大丈夫ですか?と聞くと、全く大丈夫!!と言うけど全然大丈夫じゃない。
もういいや、この先は歩こう、美術館まであと300メートルくらいだろうと、雪の山の中に半分埋まったドアをこじ開ける決心をしたが、運ちゃんはおろしてくれない。
どうなっちゃうのかな。
やがて前方からIDをぶら下げた雪かきのいでたちのむくつけき黒人男性3人が現れ道に積もる雪をスコップでどけはじめる。
タクシーの運ちゃんは窓を全開にして大声でその三人を呼び、クルマを押してくれ!と懇願。何度も何度もアクセルを全開にしてその三人に押してもらってようやく脱出、ああよかった。
メトロポリタンミュージアムの前でメーターは10.5ドルだったけれど、彼は30ドル!!と言った。よく見えなかったけれど、彼は車を押してくれた雪かき職員たちにお礼を渡したようだったから、そういうことになるんでしょうか。
トラックにぶつかったり雪の中に閉じ込められたりブーツじゃない足元をぐしょ濡れにして歩いたりしたことを思えばとそのまま渡して美術館に入ったのでした。