この頃の読書より
『芸術と労働』白川昌生+杉田敦 編 水声社 2018
『美術、市場、地域通貨をめぐって』白川昌生 水声社 2001
『贈与としての美術』白川昌生 水声社 2014
『複製技術時代の芸術』 W.ベンヤミン 晶文社 2004
一冊め、色々な人が芸術と労働について書いているものでとても面白かったのですが
『労働』というとやはり『生産』ということになり、それでは芸術は『生産』なのかしら。
『搾取』という言葉も出てきたけれど、そうなると『資本家』は誰で『生産手段』は何なの?など思ってしまって、白川さんの本をもっと読みたくなって結局あと2冊読みました。
作品が売れるということがそう多くない私なので、芸術とお金、表現活動と経済、といったこともこの際しっかり考えたかったのです。
数年前に、生協の共同購入グループの一人の奥さんに『乾さんの場合、芸術家は趣味で、非常勤の先生が仕事ってことよね』と言われたことがあります。
趣味だと思ってやってきたつもりはないのでその言葉には傷つきましたが、確かに報酬が得られない以上、仕事と呼べないと言われたら反論できませんでした。
その頃、ハンス・アビングの『金と芸術 なぜ芸術家は貧乏なのか』という本が出て、私は早速読みました。
分厚い本でしたが、結局彼の答えはシンプルでした。
芸術家の人数が多すぎるから、ほとんどの芸術家は貧乏なんだというものでした。
わかりやすかったけれど納得はできませんでした。
自分のことはさておくとして、芸術家が増えたら社会は豊かになっていくように思ったからです。
で、その豊かさは、貨幣価値とは別体系なのではないかと思ったのです。
白川さんの2001年と2014年の2冊を読んで、そのことも含めて様々納得できた感じがします。
芸術家はお金には変えられない価値を生み出しているんだよ、ということでもなく、価値体系のフェーズというか次元が逆回りなんですね。
作品は社会への贈与なのだという考え方を知って、私は少し制作に余裕を持てたように思います。