二学期が始まります。
二学期最初の五分美術史は教科書の中からでなく夏休みに私が見たことを伝えようと思います。
美術史5minutes No.7
夏休みに見た展覧会より その1 あいちトリエンナーレ
あいちトリエンナーレの紹介は夏休み前にしましたね。 名古屋で3年に一度国際芸術祭が開かれていて、今年はその年です、だから行ってみようよ、きっと面白いよ、と。 まずは見てきた作品から、こんなのもアートだよの紹介を少し.
タニア・ブルゲア
展示室に入る前に手にスタンプが押されます。この 5 桁の数字は、2019 年に国外へ無事に脱出した難民の数と、 国外脱出が果たせずに亡くなった難民の数の合計を表しています。室内はメンソールが充満していて泣きたくなく ても涙がこぼれます。
モニカ・メイヤー
「女性として差別されていると感じたことはありますか? それはどのようなものですか?」 「あなたや、あなたの身近でセクハラ・性暴力がありましたか? それはどのようなものでしたか?」
こんなストレートな質問に答えるワークショップが開かれそれの結果が展示され会期中も参加型で増え続けていく作品。(この二つとも現在は展示中止と展示替え )
そして報道などで知っているかもしれませんが、『表現の不自由展・その後』 これも全66作品のうちの一つです。過去に検閲などで展示取り下げになった作品たちを集めて展示し、表現の 自由について考えてみてください、というテーマの展示でした。
作品に対する抗議や脅迫で開幕後 3 日で展示中止、その展示中止に反対する海外作家 11 名が自ら抗議の意味で 展示取り下げや内容変更などをし、今も問題は収束していません。 私は、抗議が始まる前のタイミングであいちトリエンナーレに行きました。話題となった『平和の少女像』も見 ましたが、彫刻として佳作であると感じ、反日のものというよりは、戦時下に性暴力の対象となり悲惨な人生を 送ることになった女性たちの悲劇を伝える作品で、政治的というよりはむしろ文学的な作品であると思いました。
今回の展示中止によってさらに表現の不自由が顕在化するという皮肉な結果になりましたが、私は高校生の君たちに表現の自由について考えてほしいと思います。
これまで3年生の二学期後半は自由制作となることが多く、本当に何を描いてもいいんですか?と時々聞かれました。 その質問のために用意している私の答えはいつも決まっていました。
『誰かを傷つけたり不快にさせるような表現でなければ、なんでもいいよ』というものです。
でも、この条件は表現の自由を損なうものだと捉えることもできます。実際あいトリでは、不快だから取下げろという脅迫によって展示は中止されてしまいました。
表現の自由はどんな内容であっても保障されなければならない、のだと今は思います。 もしも表現したものが誰かを傷つけたとしても、傷ついたと主張する人たちは今回のように言葉の暴力に訴えるのではなく、両者(見た人と作った人)は色々なやり方で丁寧にわかり合っていくべきだと考えます。