高校生向け5分美術史のNo.8は夏休みに見た展覧会 その2です。
以下テキストと画像です。
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塩田千春展 魂がふるえる 森美術館/東京・六本木
ベルリンを拠点に活動する日本人女性アーティストの日本での初の大規模個展。
森美術館は、六本木ヒルズ森タワー53階地上約230mにある美術館です。
美術館といえば、ある広さの敷地にエントランスや庭園ももちだいたい二階建てというのが相場ですが、森美術館はそうした常識を覆すものとして 2003 年に開館しました。
塩田作品のメインは、黒や赤の糸を空間全体に張り巡らせた大型インスタレーションで、これは圧倒的です。他にも窓枠や旅行鞄を使ったインスタレーション、自分自身のパフォーマンス映像やドローイングなども展示されていました。
作品から感じたテーマは「皮膚感覚」です。作者自身が感じる不安とか、心の動きとか、外界から感覚的に受け取ってしまったものとか、そうしたものを、ある時は自分の身体を使い、ある時は過剰な量のモノを空間全体に使って、強く拡張している作品です。
したがって作品はどこまでも個人的なものなのですが、その度合いが強烈で、かつ、繊細さを表現する造形に成功しているので、彼女個人の魂の震えに見る人は共振してしまうのでしょう。
もうひとつの展覧会は
伊庭靖子展 まなざしのあわい 東京都美術館
描かれているものは、クッションやガラス製の美しいお皿や、アクリルケースに入っているつぼなど身近なものばかりですが、一点一点に息を呑む美しさがあります。ただ美しく写実的に描かれているだけではありません。例えばクッションの絹の質感、そこにほどこされている刺繍糸の質感が、とてもリアルでありながらどこかリアルでない感覚が生まれます。作家の、見つめている目と描いている手の間にあるもの、そして鑑賞している自分と作品の間にあるもの、それは何だろうと思わされます。あわい、とはこのことかと。
伊庭靖子の作品は、鑑賞者の『見る』という行為に、美しい余韻を持たせてくれました。
個の拡張とは真逆の、誰もが持つ感覚を美しく伝えてくれた作品です。
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以上、テキスト終わり。
前回の表現の自由と不自由についてでは、高校生たちはとてもしっかりと聞いてくれました。
自分が見たことで伝えるということは大切だと思いました。