10月9日
生徒たちを連れて浜松市美術館へ。ここ何年かの恒例授業となっている。
2時間連続の美術の授業ではあるがその授業内の時間に行って鑑賞して帰ってくるので慌ただしい。
それでも生徒たちはこの美術館行きをいつも楽しみにしていてくれる。
毎回必ずワークシートを課しており、今度の五分美術史は、その提出された生徒たちの文章のうちの二つから構成しました。絵を描く立場での鑑賞の好例として、
以下、テキストと画像です。

石黒賢一郎 油彩による超写実の世界。 斎藤雅緒 エアブラシによる超写実の世界。 水曜日のクラスしか美術館に行けませんでしたが、提出されたワークシートから、二つを紹介します。
『とてもリアルに描かれた人やものを見て近くで見れば筆跡が見えるのに遠くから見るとそ れを感じさせないような描写だと思いました。物の絵が白と黒で描かれているのにそれを感 じさせないような色のグラデーションや鉛筆の使い方に感動しました。』
『石黒作品の「シャフトタワー」鉄骨のさび、影のつけ方が完成されていないのにもかかわ らず、しっかりとわかる。 近くで見た時にはおかしいと思うものでも遠くから見た時には美しいと思われるように作品 を作っているところを参考にしたい。』
浜松出身作家、石黒賢一郎と斎藤雅緒の作品群を鑑賞したわけですが、圧倒的な リアルな描写に対してこの二人はとても冷静に作品を見ています。
この展覧会の場合、まずは、本物のように描かれていることがすごいという驚き が鑑賞したすべての人にあるのですが、作品を近くで見ると、それはやはり絵で あることがわかる。紹介したワークシートの文章はそれを伝えています。至近距 離に寄っても黒板にしか見えなかったという描写もあったけれど、それでもやっ ぱりそれは本物ではなくて描かれたもの。つまり絵とは、どこまでもフィクショ ンなのです。 それをどんな技術で描いているのか、それを見てきましたということが伝わった ワークシートの文章でした。
教科書でみる印刷された作品や、液晶画面の映像からはつかむことが出来ません。実際に美術館に出向き実物を見 たからこそ感じられたことだと思います。
もちろん、作家が作ったスーパーリアルというフィクションに感動する素直な鑑賞者であっても美術館に行った価 値は十分すぎるほどありました。
月曜のみんなには申し訳なかったけれど、学芸員さんのご好意で、行けなかった人全員にチケットは渡ったのでぜ ひ行ってみてください!
////
テキスト終わり。
7万人の入場があったという木梨憲武展に比べると、地味な展覧会でしたが、木梨展のように企画屋さんの企画を丸ごと買って展覧会をしたのではなく、美術館学芸員が自前で作った企画であり、浜松出身作家ということであるので、これは地方都市美術館がやるべき仕事であると思い、浜松市美がんばっていると思いました。