4月29日 水曜日 昭和の日
ナイチンゲール 『看護覚え書き』薄井担子訳 現代社 1991 を読みました。
原題は Notes on Nursing What it is and What It is not
まだ30代だった頃、看護師の友達に,いろんな分野の人が読むべき本だと思うからと言われて,プレゼントされました。
その時は、女性の生き方の書として読んだように思います。
ナイチンゲールの職業意識、看護とは女性にふさわしい職業であるのかないのかということを超えたものだというナイチンゲールの考え方のことを覚えています。
今、再読してみると、そういう側面も確かにあるけれど、それ以上に、病気に対してどう向き合うべきかが、緻密に書かれた書であるのでした。
この本が書かれた時、まだ天然痘は脅威でした。麻疹もポリオも破傷風も結核も、ワクチンのない時代でした。
ひとたびそれらに罹れば、死というものがとても身近だった社会で、ナイチンゲールの病気の定義は、悲観的ではありませんでした。病気とは、降りかかる厄災ではなく、人びとが持つ回復過程のこと、自ら癒そうとする自然のはたらき、その根拠が外因であれ内因であれ、その時々の結果として現れた現象なのだ捉えています。
そして、その病気の回復を支える看護においてなによりも必要なのは、観察、そして経験。病気自体の観察と患者への観察を細やかに行なうことの大切さが繰り返しさまざまな事例で紹介されています。
換気の重要性が真っ先に挙げられ正しい換気について繰り返し記述しているのは、この時代の感染への対処の一番重要なものだったからだろうと想像します。今の、密を避けよ、とあまり変わりません。
神秘はもちろん、愛をも説かず、考えることをもっとせよといい、可能な限り科学的に客観的に患者に寄り添えと説くナイチンゲール。
不安に覆われている今、強い力で灯されたあかりを見たような気持ちになりました。