2月19日
母の世話と姉の通院の付き添いで実家に一泊しました。
ずっとずっと、展覧会準備、作品のことで頭がいっぱいで、泊まってる暇なんてあるだろうかと余裕のない私でしたが、高校大学と一緒だった友だちが、ムーミン展に誘ってくれたので、それではと、藤枝の実家に泊まって翌日に静岡に行こうと決めました。
私の方も、ムーミン展にいくなら彼女を誘って、と思っていたので嬉しいことでした。
ムーミンは好きです。
いつから?というと、うーん、大学生の頃からでしょう。
本棚にある講談社ムーミン童話全集全9巻の奥付を見ると初版1990年で、私のは1996年版でした。自分のためというより子どもたちのために揃えたのですが、結局自分のものになりました。
さて、静岡県立美術館に向かう1号線で富士山がとても美しく現れて良い道行きでした。
平日なのに大勢の来館者、ほとんどが女性で、ムーミンファンという感じ。
展覧会は、ムーミンキャラクターが出迎えるというよりは、しっかりとトーベヤンソンの生涯を伝え、挿絵の美しさを伝え、ムーミンの出版や翻訳にまつわる様々を伝え、トーベヤンソンに影響を与えた浮世絵の様々を伝え、という王道の内容でした。
ムーミン展ならば数字は稼げるでしょうがそれはそれ、内容はおもねらないあたりは企画者の矜持でしょうか。見ごたえがありました。
挿絵や児童文学がトーベヤンソンの本懐であったのか、そこは興味がありました。生活のために挿絵や絵本を描く人はたくさんいるし、その作品が評価されいつしか本業となる人もいるからです。
展覧会を見ても、そのことに触れたテキストはありませんでしたが、5メートル級の巨大なタブロー壁画が展示されており、相当の労作であったと添えられていました。
彼女はやはり、ファインアートの道を志していたのだと感じました。
でも、その作品は、私から見ると、力作ではあるけれど素晴らしいとはいえず、10センチ四方の紙に美しく繊細に描かれた挿絵の方が心に触れてくるのでした。
壁画の仕事は一人で生み出すものであったけれど、ムーミンの方は編集者をはじめチームで成した仕事であったのかもしれません。
トーベヤンソンは孤高の人であったのか。
タバコを吸いながらムーミンをさっと描く映像が流れていました。
ムーミンが好きだと書いたけれど、どこが好きだったのだろう。
帰宅してから、講談社の全集のひとつを開くと、山室静のやわらかで品性と知性に満ちた翻訳の世界がそこにはあって、フィンランドの透明な光や冷たい空気が感じられました。
好きな理由は忘れてしまったけれど、全巻読んでみようと思いました。
今読めばきっと新しい理由で好きになれる、そんな予感がします。フィンランドの旅、北欧のファンタジーの世界に行ってみます。きっと制作は間に合うでしょう。