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2021年 3月11日 (2) ブレーキ音が響き、車内は騒然となりました。 二両編成だったか、正確な記憶はないのですが、とにかく長い列車ではなく、3時間に一本程度の運行の小さなローカル線である常磐線普通列車。 私は先頭車両のワンマン運転の運転士さんから近めの席にいました。ボックス席ではなく通勤電車車両の座席仕様。やや距離を置いて座っていた右隣の40代くらいの男性や、向かい側に座っている私と同世代ぐらいの女性、などは私同様旅行者かなと思われる風情でした。そんな人たちがポツンポツンと掛けており、残りの人たちは地元の人かなあという常磐線普通列車、混み合う車内ではありませんでした。 でも、みんな緊急停車で青ざめました。いえ、マスクで顔色などわかりませんし、言葉を発した人はいませんが、座席から立ち上がり中腰になって辺りを見回した人たちが何人もいました。 誰もがみんな同じことを想像したと思います。 地震か?! そしてまた津波が来るのか?! そんな緊張の時が流れた直後に、運転士からの車内アナウンスが始まりました。 『ただ今、車両の下に何か異物を感じましたので停車しました。』 そして彼は無線でやり取りを始める。列車を停車させたまま、車両の外に出て行く。 私たち乗客は、地震ではなかったのだと安堵し、運行の再開を待つ。 また静かな時間が流れ始めました。 そして時刻はやがて14時40分を過ぎる。 あの震災の起こった時刻14時46分には、私は運行中の車内で一人で黙祷する予定でした。 スマホでやりとりしていた福島県立博物館の学芸員の小林さんから、博物館は全員で黙祷しますというメッセージが届いていました。 向かいの席の女性も時計を見始めました。彼女も同じことを思っていたのでしょう。 そして14時45分ごろのことです。 また車内の静寂を破る出来事が起こりました。 突然、車両の外から、防災スピーカーの音声が聞こえてきたのです。 『大震災でー、亡くなられた方々にー、哀悼のー、意を込めてー、黙祷をー、お願いします。』 『これよりー、合図によりー、黙祷をー、お願いします。』 割れたスピーカー音。若い女性の声でした。学校の校内放送のような棒読みでした。でもゆっくりとはっきりと、止まっている車両の中にもその声は流れました。線路脇に防災スピーカーがあったのです。 14時46分。 『もくとう〜』のアナウンス。 私は目を閉じて下を向きました。 1分間が流れました。 乗客の全員が黙祷した、と思います。 やがて『お直りください』のアナウンス。そしてまた静寂。 奇跡のような1分間だったと思います。 10年前に大津波が襲ったこの場所で、行きずりの私たちは、今日のこの1分間を黙って静かに共有し、犠牲者への祈りを捧げたのです。 涙がこみ上げて来ました。 このことを振り返って書いている今も、この時のことを思うと、特別な精神状態になります。 黙祷の後あまり時間をおかずに、『異常を認めなかったため、運行を再開します』という運転士の車内アナウンスがあり、また列車は動き始めました。 そして何分かの遅延で、常磐線普通列車は終点仙台に到着したのでした。 私は想像します。 何が列車を止めたのか。 津波の犠牲者たちの霊魂なのでしょうか。 運転士に、どうしても列車を止めたい事情があったのでしょうか。 緊急停車地点が、あの防災スピーカーの間近だったのは偶然なのでしょうか。 それは誰にもわからないことです。運転士が止めたとしたら、彼ひとりにはわかることかもしれない、それでもやっぱりわからない。 ただ、私は、何か、深く救われた思いがします。 10年目を歩こうというからには、何か謙虚で確かななものを携えて、福島に行かなければならないと思っていたのに自分に自信が持てませんでした。 物見遊山では決してない、でもヒューマニズムでもない、寅さんみたいに自由と強さと優しさと少しのお金を持って旅ができたらいいなあと思って始めた10年目を歩く旅だけれど、こんな私が一体何をという思いがありました。 あの1分間で私は逆に彼らに許してもらったのかもしれない。 あの敬虔さ。 それは授かったものだと感じます。 旅の意味など持たぬままにいてもいいのだと思わせてもらえました。 こんな風に3泊4日の旅が始まったのでした。(続く)
by hisakoinui
| 2021-03-27 21:00
| 旅の記録
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