山女という福島で有名だという餃子屋さんがホテルの近くにあると知り、晩ご飯はそこでいただきました。
小さなお店でカウンター席だけ。アクリル板の仕切りでひとりの席を作ってもらう。
餃子だったらビールかなと思ったけれど、お店は全力で日本酒推しなので、それではと福島のお酒をいただきました。
天明という福島の銘酒。あ、美味しい~とお酒と餃子を楽しんでいるとアクリル板越しに隣で飲んでいる実年カップルの女性の方が声をかけてくれる。
福島のお酒のあれこれについてたくさんのお話。
どちらからですか?と尋ねられ、静岡と答えれば、今度は静岡のお酒の話。静岡のお酒は美味しいんですか?どんなお酒があるんですか?
気がつけば、磯自慢、志太泉、喜久酔、国光、杉錦などなど私の好きな藤枝や焼津のお酒について福島で話している。
大井川水系のお水がいいんです。近年、丹波から杜氏さんを呼んでお酒がさらにおいしくなったんです。でもリニアの工事で大井川水系が破壊されたらもう飲めなくなっちゃいます、など。
10年目を歩くの二日目の夜にもまた福島の人たちにウェルカムされた。
そしてひとりだからなんだこの展開、と急に気づいた。
ひとりとは、開いているということ。私はいまひとりで外に向かって開いているんだ。
複数でいたら閉じてしまう。
楽しいお酒に良い気分となった私は、大人しく宿に戻ればいいものを駅前繁華街方向に歩き出し、でもまあ、梯子酒はやめておこうと横断歩道を渡りながら思い直し、コーヒー専門店を見つけてそこでりんごのお菓子とストレートコーヒーを頼んだ。
しかしそのコロンビアコーヒーがあまりにも美味しくて、おかわりしたのが運のつきだったのか。
私はその夜、広くて豪華な部屋でひとり明け方まで、全然寝付けなくなってしまいました。
それにしても、コーヒーぐらいで眠れなくなることなんてこれまでには無かったことです。
眠れないと言いながらも3分後には寝ているという家族の証言の数々、若い日の登山の日々にも、どんな過酷な環境でもビバークであってもすぐに寝付けることが自慢だった。
それなのに、福島で私は明け方まで不眠に苦しみました。おぼつかない体調となって、10年目を歩くの旅は3日目を迎えました。