少し前のことですが、福島県立博物館で開催中の展覧会、『会津の絵画』展を観ました。
博物館に寄贈、寄託された収蔵品を中心とする展覧会ですが、ありがちな収蔵品展とは異なる、滋味のある、力のこもった企画でした。
まず会津藩のお抱え絵師、加藤遠澤の作品群。彼は江戸で言ったら奥絵師ということになるのでしょうか。狩野派に学びながらも優美な本流とはどこか一線を画する表現で、彼自身の雪舟に学べという信条を地で行くような作品もありました。
佐竹永海、萩原盤山というふたりの会津の絵師の屏風をじかに並べてみせる展示は圧巻です。江戸で谷文晁に学んで当時のポップカルチャーと美しく軽やかな線描を身につけた永海は盤山の弟子、会津にいてあくまでも自分の世界を深めていく盤山。
地方都市にいて表現活動を続けているたくさんのアーティストは今もいます。
浦上玉堂は好きな画家ですが彼が会津に縁が深かったことを初めて知りました。その息子浦上秋琴の作品が何点か出ています。よく言えば線が伸びやかで柔らかく明るい、悪く言えばどこかアマチュアっぽい詰めの甘さがある秋琴の作品でしたが、私はなんだかシンパシーを感じました。
そのほか、たくさんの会津の絵画が展示されているのですが、冒頭書いたように展示品のほとんどが寄贈、寄託のものということが会津地方の文化の層の厚さを思わせます。
自分の家に江戸時代のお軸や屏風があるという人がこんなにいるのかと思いました。そしてその文化財を調査した人、博物館につなげた人、企画した人がいるということも大きなことと感じました。
ところで私はこの展示を見終わって、古いヨーロッパの都市を旅して、そのまちの美術館に入った時に感じたものと同じような感覚にみまわれました。ドレスデン、ワイマール、アーヘン、といった都市の美術館には、その土地の尊敬される工房で生み出されその土地で必要とされ愛されて大切にされてきた古い宗教画がこれでもかと並んでいて、すごいなと思いました。ルーブルのマスターピースを美術史の知識を確認しながら見たのとは違う感動がそこにはあり、ヨーロッパの歴史の厚みを感じたものです。
会津で見た『会津の絵画』展は、その時の感覚を呼び覚ますような感じがしました。会津という土地、戊辰戦争の戦後がまだ息づくまち。漆塗りの技法にもつながる、何層も重ね続けて大切にされる文化。そして展覧会の場所が博物館であるからなのですが、常設展では自然史も含めた会津の生活の歴史がわかりそのことも大きかったかもしれません。
その地でしか見られない優れた展覧会とはこういったものかなと思ったことでした。
6月27日まで。
https://general-museum.fcs.ed.jp/page_exhibition/special/2021spring
画像は博物館ホームページより。