12月3日 その2
川内村は東京電力福島第一原発から30キロ圏内にある村だけれど、水素爆発の日の風向きがよくて、被害の少なかったところであるという。
全村避難にはなったが、2011年の12月には村長が帰還を呼びかけ、現在では90パーセント近くの村民が帰還していると言う。
浜通りから山を登っての小さな山あいの村。おいしいキノコが取れる自然豊かな村で、草野心平記念館と彼の仕事場でもあった天山文庫がある。
蛙の詩人草野心平がとても好きかと言えばそうでもないのだが、この小さな村で、詩人が織りなす文化の営みを大切に育て保存し、それを一つの軸にしているそのあり方がいかにも素敵だ。
今回も県立博物館の小林さんに紹介していただいた。
天山文庫の守り人、志賀さんがそれは丁寧にご案内くださった。
天山文庫は茅葺の作りで一見古民家風に見えるが、入ってみれば、とてもモダンな現代建築だった。庭との関係が素晴らしい。
3000冊の蔵書、囲炉裏と文机のある部屋。
こうしたところで詩作と思索の時間を過ごした詩人を思う。
誰が言っていたのかは忘れたが、草野心平は戦前、翼賛的な詩を書いていたことがあるのに戦後はそれを隠してきたと聞いていたので、記念館の資料をゆっくり見たがそうした記録はなかった。
あまり軽々にいうことではないかもしれないが真実を知りたいとは思った。
思想は持たない詩人であったのか。
志賀さんと、志賀さんのお客さんと3人で天山文庫を回り終わりなんとなくの自己紹介をする中で持参したくじドロジャーナルをお渡しすると、これ面白い村のアートイベントに使いたいなあと目を輝かせてくださる。
くじドロが!という嬉しさ以前に、志賀さんの村への熱い思いに触れた瞬間だった。(実現はさておいて)
このあと訪れたカフェも、泊まった小松屋旅館も、みんな村を愛している、それが強く伝わった川内村でした。