今年度も、高校の講師の仕事で妄想美術紀行という美術史を拡大したような授業をやっています。
好きな美術作品を一点選んで、その作品と作者について、作品がある美術館について、その美術館のある街や都市について調べ、妄想でそこまで旅をする、という一連のことを、作品の模写も含めてイラストやコラージュも盛り込んでA 2イラストボードにまとめるというものです。
制作を終えて、今は、作品発表をしています。スクリーンに映して1人ずつ。
なぜその作品だったのか、その作家の人生や他の代表作、旅の思い出などみなそれぞれによく調べよく書きよく描いたというものばかりです。
クリムトの『接吻』は、日本人には、人気の作品のようですがそれを調べた女子生徒がいました。
タイトルに惹かれて調べたということでしたが、調べてみるとクリムトというのはとんでもない奴だということがわかったという内容に発展していきました。愛人が15人もいたらしい、しかも子どもは20人、認知しなかった子もいたらしい、この顔で信じられません、と、ネットから引っ張って来たクリムトの写真が紹介されます。逸脱して来たけど、面白い発表になって来たなと思っていたら、突然彼女は、先生は、接吻したことありますか?と私の方を向いて質問するではありませんか!
え?研究発表中に私に質問?しかもその内容?美術史のことじゃなくて?
たじろぎましたが、生徒たちが全員私を見ているので、これは答えなければなりません。
だいたい、結婚してて子どももいるんだからそんな経験あるに決まってるでしょ、とこころの中で思いながら焦り、
接吻ってキスのことだよね、と言いながら時間を稼ぎ心を落ち着かせ、
ありますよ、としずかに答えました。
するとその女子生徒はなんと、どうでしたか?接吻?
と重ねて質問してくるではありませんか!
ここはもう正直に答えるほかはありません。
キスするとね、相手のことが、もっと好きだなあという感じになります。
と私は答えました。
生徒たちが全員静かになってしまいました。
今年度で今の高校の勤務を終えることが決まっているのですが、最後の最後に、美術室でこんな赤裸々なことを話したんだなあと思います。