もう何度も読んだ本ですが、また、読みました。
バンビ(再)
フェリックス ザルテン
高橋健二訳
岩波少年文庫 1990
児童文学を読みたくなるのは、絵を描いたりものを作ったりする気持ちが広がっている時のようです。
ドローイングや刺繍、ドライポイントなどを再開しているこの頃です。
ファンタジーの世界、洗練された美しいリアリズムの世界を旅してみたくなるのだと思います。
バンビは、ハンガリーの作家ザルテンの名作で、自然界の摂理、森の美しさ、生と死のリアリズム、ひとりで生きることの尊さなどを伝えてくれる私のとても好きな作品です。
ディズニーがあのビジュアルを作って商業的なアイコンにしてしまったことは本当に罪深く、オリジナルのバンビをたくさんの人に知ってほしいと以前は思っていました。
でも今はそれはもう良くて、私のバンビが私の中にいればいいなとこの頃は思います。
ジェンダー論的な観点からすれば、バンビは牡鹿であり、その子供時代から壮年までの生きる姿を描く中で、妻の牝鹿への対し方に、ザ男の生き方、的な表現がわずかにあるのですが、書かれた時代背景もあるのかもしれません。複雑な社会の仕組みの中で生きる現代の人間の男女とは違う、自然の中で生き抜く生物としてのオスのあり方なのかとも思いながら、今回はその部分を読みました。
それにしても、バンビの生きた森はどこの森なのか。
ハンガリーの森なのか。
美しい森の風景の中にまだ私は佇んでいます。