LRリターンズの今号の特集は、和田義男の盗作の問題。
関心はあったのに、その時の新聞報道と年末の2006年回顧記事くらいでしか知ることができなかったのでとても興味深く読みました。
新聞各紙の一面にでていた、和田氏の作品と、もとになったスギ氏の作品を覚えている人も多いでしょうが、あれを見て、素朴な疑問がいくつかあったのでした。
ひとつは、こんなに酷似してるのに美術館の企画者は気づかなかったのか、きけば一枚二枚ではなく数十枚もそっくり作品があると言うのに、ということ。
もうひとつは、真似された方のスギ氏の作品、いっちゃわるいが歯牙にもかからぬ駄作じゃん、なのになんで?ということ。和田氏の経歴を見ると東京芸大の院出とあるんだよね。あなたってめちゃ絵がうまい人なんじゃないの?と。
そのほか芸術選奨みたいなスゴイ『勲章』ってどういう経緯で決まって行くの?とか、、。
そうした私の疑問にこの特集はすごくわかりやすく答えてくれていて、しかも、この問題についてうまずたゆまずリサーチしていた人がいたことも知ったのでした。勇気づけられます。
で、わかったことですが、和田さんは、芸大に入るデッサン力はあったが、自分のモチーフがなかったようです。表現したいこと、描きたいものがないのに『画家』だったんですね。不幸です。
でも、彼には芸術家としての名誉欲だけはあったので、彼からも画策はしたが、実は、美術館評論家画商もろもろが渾然一体でこのモンダイはできあがった、つまり美術界全体の詐欺事件で、ただそれが失敗に終わったというだけらしい。もっといえば、美術界全体の詐欺事件の『成功例』だってある、そうです。
こうした唖然とする事実に触れて思うことは、私は、小さい存在であっても、自分の表現したいことを素朴に淡々と続けて行くという、そのことこそを大切にして行こうということ、かな。
絵が下手でもいいんだ、と妙に嬉しくもなりましたが。
一度帰省していた長男が本格的に東京へ。人としてしっかり自立させて家を出す、という親の勤めは果たせただろうか。