東京都現代美術館 中村宏展最終日に駆け込む。
浜松が生んだ戦後美術の巨匠の全貌、なんとしても見ておかなければと。
私が知っていたのは、美術1の教科書に載っているセーラー服の目玉少女と機関車のシュールな絵、(教科書でもシュールレアリスムのページに載っている)、砂川事件を描いたブリューゲルをおもわせる作品、ほかには2000年頃の作品くらいだったので、この展覧会は圧巻と言うほかはありませんでした。
ご本人にお目にかかったことがあるが、スーツの似合うとってもダンディな老紳士で、そのときは私の未熟な作品の資料を丁寧に見てくれました。
アンフォルメル、具体、もの派、と戦後美術のさまざまな潮流のなかで、中村は一貫して絵画を捨てなかった、その事実を圧倒的な作品数が物語っていた。自分の表現を絵画ではなく、図画といい、絵画への疑問は絵画で問うと言う立ち位置は本当に立派だ。
若い日々の偏執的ともいえるかきこみ、モチーフへの執着はものすごかったが、日本的でない太い輪郭線はベンシャーンを彷彿とさせた。目玉のモチーフは、浦沢直樹のコミックス『20世紀少年』に出てくる『ともだち』そのものだったのには驚いた。中村の60年代の作風は浦沢の作品に通底する。浦沢は中村宏のことを知っていたのだろうか。ファンなのだろうか。しかし影響関係について云々するのはこの二人に限ってはさほどみのりはないのかもしれない。
積ん読状態だった、中村の著書『絵画者』読まなくちゃ。